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外貨預金を外貨建MMFに移すと為替差益が実現する|別の銀行へ移すだけなら実現しない

投資信託・外貨預金・外貨建MMFは元本が保証された商品ではなく、為替の変動により円換算の価値が下がることがあります。本記事は国税庁の質疑応答事例を整理したもので、個別の税務判断ではありません。記載の内容は2026年10月25日時点のものです。

水路に沿って石の段が続く川辺の遊歩道の写真

結論から言うと、外貨を円に戻していなくても、為替差益が所得になる場面があります。国税庁の質疑応答事例では、米ドル預金を払い出して米ドル建のMMFに入れた時点で、それまでの為替差益を所得として認識する必要がある、と答えています。一方で、米ドル預金を満期で払い出して同じ米ドルのまま別の銀行に預け直した場合は、為替差益を認識する必要はない、という事例もあります。どちらも「外貨のまま動かした」だけなのに、答えが分かれる。ここからは2つの事例を並べて、どこで線が引かれているのかを中立的に整理します。

この記事の要点 外貨預金を外貨建MMFに移すと、その時点で為替差益が実現する(国税庁の事例では150万円)/同じ外貨で別の銀行に預け直しただけなら、為替差益は認識しない/分かれ目は「別の種類の資産に変わったか」/MMFを後で売るときの取得費は、投資した日のレートで円に直した額/所得の区分(何所得になるか)は事例に書かれていない。

事例1|外貨預金から外貨建MMFへ、150万円が実現する

1つ目の事例の照会はこうです。米ドルで預けていた預金10万ドルを払い出し、その全額を外貨建MMF(米ドル建公社債投資信託)に投資した。預金を預けた日のレートは1ドル90円、MMFに投資した日のレートは1ドル105円。この時点で預金の為替差益を所得として認識する必要があるか。

回答は「為替差益を所得として認識する必要があります」です。計算も示されています。

項目数字
預金を預けた日のレート1ドル=90円(円からドルへの交換も同じ日)
MMFに投資した日のレート1ドル=105円
金額10万ドル
為替差益(105円−90円)×10万ドル=150万円
MMFの取得に要した金額投資した日のレートで円に直した額(105円×10万ドル=1,050万円)

理由として挙げられているのは、所得税法第57条の3第1項と第36条です。外貨の預金でMMFを買うと、「公社債投資信託の受益権」という新しい経済的価値を持った資産が外から入ってくる。だから、それまでは評価の差にすぎなかった為替差損益が、第36条でいう「収入すべき金額」として実現した、と考えるという説明です。

木の格子窓のある古い銀行の窓口のセピア色の写真
窓口で外貨のまま移しても、資産の種類が変われば所得が動く

事例2|同じ米ドルで別の銀行へ、為替差益は認識しない

2つ目の事例は、A銀行に預けていた米ドル定期預金1万ドルが満期になり、同じ日に元本の1万ドルをB銀行に米ドルのまま預け直したケースです。預けた日のレートは1ドル100円、払い出した日は1ドル110円。計算上の為替差益は(110円−100円)×1万ドル=10万円になります。

回答は「為替差益を認識する必要はありません」でした。根拠は所得税法施行令第167条の6第2項です。条文は、外貨預金の元本で同一の金融機関に同じ外国通貨で預け入れることは、為替差損益を計算する対象の「外貨建取引」に当たらない、と定めています。

注目したいのは、この事例が別の銀行への預け直しだという点です。国税庁は、条文は例示であり、同じ外国通貨で預け入れと払い出しが行われる限り、元本の金額に増減はなく、実質的には外貨を持ち続けているのと変わらない、と読んでいます。そのうえで、他の金融機関への預け入れも同じ扱いが相当だと結論づけました。

2つの事例は、どこで分かれるのか

観点事例1(MMFへ)事例2(別の銀行へ)
移した先外貨建MMF(公社債投資信託の受益権)同じ米ドルの預金
資産の種類預金から投資信託へ変わる預金のまま
為替差益の扱いその時点で所得として認識認識しない
根拠所得税法第36条・第57条の3所得税法第57条の3・施行令第167条の6
事例の計算例150万円10万円(ただし認識しない)

線は「通貨が変わったか」ではなく「持っている資産の種類が変わったか」に引かれています。米ドルのまま、預金から預金へ移るだけなら、外貨を持ち続けている状態と同じ。米ドルのまま、預金から投資信託へ移ると、新しい資産を手に入れたことになる。どちらも円には一度も戻していません。

表と裏が並んだ古い銅メダルの写真
同じ「外貨のまま移す」でも、表と裏で答えが違う

事例に書かれていないこと

事例1の回答は、為替差益を「所得として認識する」とまでは書いていますが、それが何所得に当たるのかは書いていません。外貨預金の為替差益は、一般に雑所得として扱われることが多いとされますが、事例の文面からは断定できません。金額や他の所得の状況で申告の要否も変わるので、ここは税務署か税理士に確認する部分です。

もう1つ、どちらの事例も「令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成」と注記され、照会の事実関係を前提にした一般的な回答だと書かれています。自分の取引に当てはめるときは、異なる課税関係が生じることがある、という但し書きも付いています。

外貨の置き場所を変える前に確かめる3つのこと

  1. 移す先が預金か、投資信託などの別の資産か。別の資産なら、移した日に為替差益が実現する可能性があります。
  2. 外貨を最初に手に入れた日のレートを記録しているか。差益の計算は、その日のレートが出発点になります。
  3. 移した日のレートを残しているか。MMFなどを後で売るとき、取得費はその日のレートで円に直した額になります。
石造りの建物が並ぶ古い大通りのモノクロ写真
移す前に、最初に外貨を手に入れた日のレートを手元に残す

税率の違いではなく「損益通算できる相手」と「実現のタイミング」が分かれ目になる点は、外貨建MMFとFXはどっちが向く?税と為替差益で比較で扱いました。外貨の利息・換算差益・FXの手続きの違いは同じ20.315%でも手続きは3つに分かれるにまとめています。

よくある質問

外貨預金を外貨建MMFに移すと、税金がかかりますか?

国税庁の質疑応答事例では、外貨預金を払い出して外貨建MMFに投資した時点で、預金の為替差益を所得として認識する必要があるとされています。1ドル90円で預けた10万ドルを105円の日にMMFへ移した例で、為替差益は150万円です。

同じ外貨で別の銀行に移したら、どうなりますか?

同じ外国通貨で預け入れと払い出しを行う限り、為替差益を認識する必要はない、という事例があります。実質的に外貨を持ち続けている状態と変わらない、というのが理由です(所得税法施行令第167条の6第2項)。

MMFを後で売るとき、取得費はいくらになりますか?

MMFに投資した日の為替レートで円に直した金額が、取得に要した金額になります。事例1なら1ドル105円で、10万ドル分は1,050万円です。

参考にした一次情報