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同じ20.315%でも手続きは3つに分かれる|外貨の利息・換算差益・FX

投資信託・外貨預金・FXは元本が保証された商品ではなく、為替や相場の変動により損失が生じることがあります。FXは預けた証拠金を上回る損失が生じることもあります。本記事は国税庁の公表資料を整理したもので、個別の税務判断ではありません。記載の内容は2026年9月22日時点のものです。

結論から言うと、外貨まわりで「税率20.315%」と呼ばれているものは1つの制度ではありません。国税庁のタックスアンサーを開くと、源泉徴収だけで終わって確定申告に載らないものと、自分で申告して損失を3年繰り越せるものが別々に置かれています。合計税率がほぼ同じだからこそ、手続きの違いが見落とされます。この記事では、国税庁No.1310・No.1520・No.1521の3ページを開き、どこで分岐するのかを中立的に整理します。

この記事の要点 外貨預金の利息は利子所得で、源泉徴収により納税が完結し確定申告をすることはできない/外貨建預貯金の「換算差益」は金融類似商品として一律20.315%の源泉分離課税で、6類型のうちの1つ/FXの差益は「先物取引に係る雑所得等」の申告分離課税で、自分で申告する/損失を翌年以後3年内に繰り越せるのはFXの側だけ/令和9年以後は防衛特別所得税の創設と復興特別所得税の引下げが適用される。

1つ目|外貨預金の利息は、申告する余地がない

まず利息から。国税庁No.1310は、利子所得とは預貯金および公社債の利子、合同運用信託・公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいう、と定義しています。外貨預金の利息はここに入ります。

税額の計算方法の欄はこうです。利子所得は、原則として、その支払を受ける際、利子所得の金額に一律15.315パーセント(他に地方税5パーセント)の税率を乗じて算出した所得税および復興特別所得税が源泉徴収され、これにより納税が完結する源泉分離課税の対象となり、確定申告をすることはできません

「しなくてよい」ではなく「することはできない」と書かれている点が、この区分の性格を示しています。15.315%と5%を合わせて20.315%。数字は後で出てくる2つと並びますが、納税者が手を動かす場面はありません。

2つ目|換算差益は、6類型のうちの1つとして源泉分離される

次が為替差益のほうです。国税庁No.1520「金融類似商品と税金」は、金融類似商品の収益について一律20.315パーセント(所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率による源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係が終了すると説明しています。

対象は6つ挙げられています。定期積金の給付補てん金、銀行法第2条第4項の契約に基づく給付補てん金、一定の契約により支払われる抵当証券の利息、貴金属などの売戻し条件付売買の利益、5番目が外貨関連、6番目が一時払養老保険などの差益です。

5番目の文言を正確に写します。外貨建預貯金で、その元本と利子をあらかじめ定められた利率により円または他の外貨に換算して支払うこととされている換算差益。例として「外貨投資口座の為替差益など」が挙げられています。

ここが読み飛ばされやすい箇所です。源泉分離課税の対象として名指しされているのは、あらかじめ換算の特約が付いた外貨建預貯金の換算差益です。手持ちの外貨預金がこの条件に当たるかどうかは、預入時の契約内容によります。当たらない場合はこの6類型の外側なので、扱いが変わります。自分の商品がどちらなのかは、金融機関の契約書と国税庁の該当ページで確認してください。

なお、No.1520は、上記1から6までの収益については他の所得と合算して確定申告する必要はなく、扶養親族などに該当するか否かを判定するときの合計所得金額からも除かれる、と書いています。扶養の判定に影響しない点は、家族の所得を計算する場面で効きます。

3つ目|FXの差益は、自分で申告する前提の区分

3つ目が国税庁No.1521です。金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引」に該当するFXの差金等決済により差益が生じた場合、他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税される、と書かれています。申告分離課税です。

復興特別所得税については、平成25年から令和29年までの各年分の確定申告において、原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付することになる、とされています。15%に2.1%を乗せて15.315%、地方税5%を足して20.315%。数字の並びは前の2つと同じところに落ち着きます。

違うのは手続きです。源泉徴収で完結する前の2つに対して、こちらは自分で確定申告をします。国税庁の関連リンクには「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の様式が置かれており、申告の際にはこの明細書を使います。

そして損失の扱い。差損が生じた場合、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算は可能ですが、それ以外の所得との損益通算はできません。引ききれない損失の金額は、一定の要件の下、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除できます。3年という枠は、前の2つには存在しません。

スワップポイントの扱いについてはスワップポイントの税務上の扱いの基本で別に整理しています。

3つを1枚の表で並べる

観点外貨預金の利息外貨建預貯金の換算差益FXの差益
国税庁の分類利子所得(No.1310)金融類似商品(No.1520)先物取引に係る雑所得等(No.1521)
課税方式源泉分離課税源泉分離課税申告分離課税
税率15.315%+地方税5%一律20.315%(所得税15.315%・地方税5%)所得税15%+地方税5%+復興特別所得税
確定申告することはできない合算して申告する必要はない自分で申告する
損失の繰越なしなし翌年以後3年内
扶養判定の合計所得金額除かれる含まれる

市場・店頭デリバティブに該当しない取引は、また別になる

No.1521には但し書きがあります。「市場デリバティブ取引」にも「店頭デリバティブ取引」にも該当しない取引における差金等決済により生じた損益は、一般的には雑所得として総合課税の対象となり、課税総所得金額に応じた超過累進税率で課税される、という記述です。

この場合、雑所得の範囲内での損益の通算はできますが、他の各種所得との損益通算はできず、申告分離課税の対象となる「先物取引に係る雑所得等」の金額との通算もできません。20.315%という数字自体が当てはまらない領域が残っています。

なお、No.1521が言う店頭デリバティブ取引は「第一種金融商品取引業者」または「登録金融機関」を相手方とする取引に限られる、という限定も置かれました。

令和9年以後に変わる部分

3ページとも令和8年4月1日現在法令等の内容で、先の改正にも触れていました。No.1520は、令和8年度税制改正により防衛特別所得税の創設ならびに復興特別所得税の税率の引下げおよび課税期間の延長が行われ、令和9年以後に適用されるとしたうえで、改正前後で防衛特別所得税および復興特別所得税の合計税率に変更はないため源泉徴収税額の計算方法に変更は生じない、と説明しました。

No.1521の側はより具体的で、令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が2.1パーセントから1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1パーセント相当額)が併せて源泉徴収される、と書かれています。合計の負担が同じでも、内訳の名前と率は別物。2027年以降に数字を引用するなら、この点を取り直してください。

外貨の置き場所を移すとき、何を見るか

3つの区分を並べると、選択の基準が税率ではないことがはっきりします。

  1. 申告に載せたくないなら、源泉分離課税で完結する側に置く。ただし損失が出ても繰り越せません。
  2. 損失を翌年以後3年内に使いたいなら、申告分離課税の側を選ぶ。確定申告が前提になります。
  3. 扶養の判定に影響を出したくない場合、No.1520の6類型が合計所得金額から除かれる点が効きます。

商品の性質そのものの比較は外貨建MMFとFXはどっちが向く?税と為替差益で比較に、FXと投資信託の値動きの源泉の違いはFXと投資信託の違いを表で整理(中級)にまとめてあります。外貨預金から別の外貨商品へ移し替える場面では、移した時点で所得が実現することがあるため、前者の記事で扱った国税庁の質疑応答事例も併せて確認してください。

参考にした一次情報