DEFINITION / 交付目論見書の読み方
そのファンドは「ESG投信」か|金融庁の2条件で確かめる
本記事は2026年10月3日時点で公開されている金融庁の資料をもとにした情報提供であり、特定の商品の勧誘や投資助言ではありません。投資信託は預金ではなく、元本は保証されません。基準価額は組入資産の値動きにより変動し、損失が生じることがあります。投資の前に各ファンドの交付目論見書をご確認ください。

結論から言うと、あるファンドが「ESG投信」に当たるかは、金融庁が監督指針で示した2つの条件で確かめられます。1つは、ESGを投資対象を選ぶときの主要な要素にしていること。もう1つは、そのことを交付目論見書の「ファンドの目的・特色」に書いていること。名前にESGと付いているかどうかではありません。2023年3月31日から適用されたこの線引きと、目論見書のどこを見ればよいかを中立的に整理します。
金融庁が決めたESG投信の2条件とは何ですか?
「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の改正で、ESG投信の範囲が次のように書かれました。改正は2023年3月31日に公表され、同日から適用されています。
| 条件 | 監督指針の記載 | 読み手が確かめる場所 |
|---|---|---|
| ① | ESGを投資対象選定の主要な要素としていること | 運用プロセスの説明。ESGが「他の要素と並ぶ1つ」なのか「主要な要素」なのか |
| ② | 交付目論見書の「ファンドの目的・特色」に①の内容を記載していること | 交付目論見書の冒頭近くにある「ファンドの目的・特色」の欄 |
2つは「かつ」でつながっています。①だけでも②だけでもESG投信には当たりません。ファンド・オブ・ファンズのように運用を外部に任せる場合は、投資戦略やポートフォリオ構成を踏まえて運用会社が判断する、という但し書きも付いています。

「主要な要素」に数値の基準はありますか?
ありません。改正案に寄せられた意見の中に、「投資対象の50%以上や80%以上」といった数値のイメージを示してほしいという質問がありました。金融庁はこれに対し、ESG投信に当たるかどうかは監督指針を踏まえて運用会社が個別に判断するものと回答しています。
同じ回答の中で、国連グローバル・コンパクトに沿わない企業を最初に除外し、その後は業績分析で銘柄を選ぶようなファンドは「主要な要素」には当たらない、という理解も「ご理解のとおり」とされました。ESGを少し考慮しているファンドと、ESGを主軸に選んでいるファンドは、制度の上でも別物として扱われています。
ポイント:数値の線がない以上、「何%以上だからESG投信」とは判定できません。読み手にできるのは、運用会社が自ら書いた「目的・特色」の文章を読み、ESGが主要な要素として書かれているかを確かめることです。
名前にESGと付いていれば、ESG投信なのですか?
そうとは限りません。監督指針は「投資家の誤認防止」の項目で、ESG投信に当たらない公募投資信託の名称や愛称に、ESG、SDGs、グリーン、脱炭素、インパクト、サステナブルといった用語が含まれていないかを検証するとしています。

経過措置もあります。2023年3月末までに設定された、ESG投信に当たらないファンドで名前にESG関連の用語が入っているものは、ESGを投資対象選定の主要な要素としているものではない旨を交付目論見書に明記しているかが見られます。あわせて、そうした用語はできる限り速やかに名称から外すことが望ましいとされました。
つまり、名前に「サステナブル」と付いていても、目論見書に「主要な要素としているものではない」と書かれているファンドがありえます。この一文を探すことが、見分ける近道でしょう。名前と中身のずれについてはグリーンウォッシュの見抜き方でも整理しています。
ESG投信の目論見書に書かれているはずの5項目
監督指針は、ESG投信の交付目論見書の「ファンドの目的・特色」に書くべき事項を挙げています。手元の目論見書と突き合わせるときの目次として使えます。
- ESGの具体的な内容。ESGの総合評価なのか、気候変動などの特定の課題なのか。
- 運用プロセスでの勘案方法。使う基準や指標、評価方法の説明を含みます。
- 勘案するときの制約やリスク。この項目だけは「投資のリスク」の欄に書かれることもあります。
- インパクトを目的とする場合の目標と評価方法。環境や社会へのインパクト創出を掲げるファンドが対象です。
- スチュワードシップ方針。投資戦略に関わる方針がある場合、その内容。

さらに、ESGで選んだ投資対象の比率に目標や目安を設けている場合はその数字を、設けていない場合はその理由を書いているかも検証項目です。ESG指数に連動するファンドなら、その指数がESGをどう勘案しているか、なぜその指数を選んだかの記載が求められます。
持ったあとは交付運用報告書で確かめる
あります。ESG投信の交付運用報告書には、継続して次の内容を書くことが求められています。投資比率の目標を設けている場合の実際の比率、ESGの評価指標の達成状況、インパクトを目的とするファンドならその達成状況、そしてスチュワードシップ活動の状況です。
目論見書は「何をするか」、運用報告書は「何をしたか」を書く書類です。2つを並べれば、掲げた方針どおりに運用されているかを読み手が自分で確かめられます。議決権行使の記録の探し方は議決権行使結果の調べ方で整理しました。

確かめる順番
- 交付目論見書の「ファンドの目的・特色」を開く。ESGが投資対象選定の主要な要素として書かれているかを読みます。
- 「主要な要素としているものではない」という一文がないか探す。あれば、名前にESG関連の言葉があってもESG投信ではありません。
- 上の5項目が書かれているかを照合する。欠けている項目があれば、ウェブサイトの参照先が示されているかも見ます。
- 交付運用報告書で実績を確認する。目標を掲げているなら、実際の比率や達成状況が載っているはずです。

新NISAでESGファンドを組み込む考え方は新NISAでESGファンドに投資する方法にまとめています。ESG投信かどうかの判断材料は、各ファンドの交付目論見書の中にあります。読む場所を知っておけば、名前に引っ張られずに済みます。
よくある質問(FAQ)
- Q. ESG投信の定義はどこに書かれていますか?
- 金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」です。2023年3月31日に改正が公表・適用され、ESGを投資対象選定の主要な要素としており、かつ交付目論見書の「ファンドの目的・特色」にその内容を記載している公募投資信託をESG投信としています。
- Q. 投資対象の何%以上がESGならESG投信になりますか?
- 数値の基準はありません。パブリックコメントで50%や80%といった目安を問う意見が出ましたが、金融庁は、該当するかどうかは監督指針を踏まえて資産運用会社が個別に判断するものと回答しています。
- Q. 名前に「サステナブル」と付くファンドはESG投信ですか?
- 名前だけでは判断できません。2023年3月末までに設定されたファンドには、ESGを主要な要素としていない旨を交付目論見書に明記したうえで名前に関連用語が残っているものがありえます。目論見書の記載を確認してください。
- Q. ESG投信は元本が守られますか?
- 守られません。ESG投信も通常の投資信託と同じく、組入資産の値動きで基準価額が変動し、元本を割り込むことがあります。ESGに当たるかどうかは運用方針の区分であって、安全性の区分ではありません。
- 金融庁「『金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針』の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」:https://www.fsa.go.jp/news/r4/shouken/20230331-2/20230331-2.html(2023年3月31日公表/2026年10月3日確認)
- 同 新旧対照表(PDF):https://www.fsa.go.jp/news/r4/shouken/20230331-2/02.pdf(ESG投信の範囲・開示・定期開示)
- 同 コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(PDF):https://www.fsa.go.jp/news/r4/shouken/20230331-2/01-2.pdf(「主要な要素」の判断主体)
挿絵:いらすとや