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外国で引かれた税は自動では戻らない|海外ESGファンドの二重課税の扱い|2026年9月版

ESG入門公開:2026年9月4日最終更新:2026年9月4日文:凛

本記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の投資信託・金融商品の購入を勧誘するものではありません。投資信託は元本割れの可能性があります。税務の取り扱いはご自身の所得状況や保有する商品の種類によって変わるため、記載の制度内容は2026年9月時点で国税庁が公表しているものに基づく一般的な整理です。実際の申告は所轄税務署・税理士へご確認ください。

結論から言うと、海外の企業に投資するESGファンドでは、分配金が手元に届く前に外国で税が引かれていることがあり、その分は自動的には戻ってきません。投資信託の内側で調整される仕組みと、自分で確定申告して取り戻す仕組みの2つがあり、どちらが働くかは商品と支払い方によって変わります。この記事では、二重課税がどこで起きるのか、どちらの制度で調整されるのか、そして控除の限度額がどう決まるのかを中立的に整理します。

二重課税はどこで起きているのですか?

海外の株式に投資するファンドの分配金は、いくつもの課税を通過してから手元に届きます。まず投資先の国で、その国の法令に基づく税が源泉徴収されるでしょう。そのうえで、日本側の課税がもう一度。公募株式投資信託の収益の分配は配当所得にあたり、国税庁No.1330によれば上場株式等の配当等(大口株主等が受けるものを除く)は15.315%(他に地方税5%)の税率で源泉徴収されます。合計すると20.315%です。同じ利益に2か国の税がかかる状態が、いわゆる二重課税にあたります。

国税庁タックスアンサー No.1240「居住者に係る外国税額控除」(令和7年4月1日現在法令等)は、この外国で課された税を「外国所得税」と呼び、居住者がそれを納付することとなる場合には控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引けるとしています。逆に言えば、控除を使わなければ引かれたままになります

ESGファンドは、海外の企業を組み入れる商品が多い分野です。気候変動対応や人権・ガバナンスの評価軸で銘柄を選ぶ性質上、欧州や北米の企業が組入上位に並ぶことは珍しくありません。国内株中心のファンドでは意識せずに済む論点が、ここでは現実の金額として出てきます。

制度は2つある——投信の内側と、自分の申告

調整の経路は2つに分かれます。

外国で課された税を調整する2つの制度(国税庁No.1200・No.1240より整理)
制度どこで働くか控除の内容
分配時調整外国税相当額控除集団投資信託の収益の分配等を受け取るときその収益の分配に係る所得税の額から控除された外国所得税の額のうち、支払を受ける収益の分配に対応する部分の金額に相当する金額を控除する
外国税額控除自分の確定申告日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に外国の法令で所得税に相当する税が課されている場合に、一定額を控除する

前者は平成30年度の税制改正で創設された制度で、投資信託の分配の段階で調整が行われます。後者は、投資家自身が確定申告書を提出して取る控除です。No.1200はどちらについても「この控除を受けるためには、確定申告書の提出の際に一定の書類を添付する必要があります」と記載しています。書類が揃っていなければ、制度があっても届きません。

ポイント:「投信の中で調整されているはずだから、自分は何もしなくてよい」と考えると取りこぼします。どの部分が分配時に調整済みで、どの部分が申告の対象として残っているのかは、証券会社から届く支払通知書や年間取引報告書の記載で確認するのが確実です。

控除限度額はどう決まるのですか?

外国税額控除は、納めた外国所得税の全額が無条件に戻る仕組みではありません。No.1240は控除限度額を次の算式で示しています。

所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)

つまり、自分の所得全体に占める国外所得の割合ぶんしか枠がありません。国内の所得が大きく国外の所得が小さい人ほど、割合は小さくなります。外国所得税額がこの限度額を超えた場合は、復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)を限度として、超える部分を復興特別所得税額から差し引けます。復興特別所得税額は基準所得税額に2.1%の税率を乗じて計算した金額です。

算式に出てくる「所得総額」には、総所得金額のほか、申告分離課税の上場株式等に係る配当所得等の金額、上場株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額、山林所得金額などが含まれます。繰越控除の適用を受けている場合は、その適用前の金額で計算します。

数字で見る:枠がいくらになるか

その年分の所得総額が600万円、うち調整国外所得金額が30万円、所得税額が40万円だったとします。所得税の控除限度額は 400,000円×(300,000円÷6,000,000円)=20,000円。外国で45,000円の税が引かれていても、所得税から差し引けるのはまず20,000円までです。超える25,000円については、復興特別所得税額(400,000円×2.1%=8,400円)に同じ割合を乗じた8,400円×0.05=420円が限度になります。さらに地方税の控除限度額は20,000円×30%=6,000円です。国外所得の割合が小さいほど枠は細くなる、という関係がここに出ています。

枠が余った年、あるいは足りなかった年のために、繰越の仕組みも用意されています。その年の前年以前3年内の各年から繰り越された外国所得税額または所得税の控除限度額を基に計算した金額を、その年分の所得税額から控除する形です。地方税の控除限度額は、その年の所得税の控除限度額に30%を乗じた金額になります。

対象にならない外国の税もあります

外国で引かれた金額であれば何でも対象になるわけではありません。No.1240は、外国またはその地方公共団体により課される税であっても、次のものは外国所得税に含まれないとしています。

  1. 税を納付する人が、その納付後、任意にその金額の全部または一部の還付を請求することができる税
  2. 税を納付する人が、税の納付が猶予される期間を任意に定めることができる税
  3. 複数の税率の中から、納付する人と外国等との合意により税率が決定された税のうち一定の部分
  4. 外国所得税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税

さらに、外国所得税に該当しても控除の対象にならないものがあります。通常行われる取引と認められない一定の取引に基因して生じた所得に対して課される外国所得税額や、資本の払戻しなど所得税法第25条第1項各号に掲げる事由により交付を受ける金銭等に対して課される外国所得税額が、これにあたります。制度の根拠法令等として、No.1240が挙げているのは所法44の3、95、95の2、所令93の2、221〜226の2、所規41〜43、所基通95-1〜95-30、復興財確法13、14。条文の数からも、単純な「引かれた分が戻る」制度ではないと分かります。

確認する順番はどうすればよいですか?

手を動かす順番としては、次の流れが整理しやすいでしょう。

  1. 目論見書で投資対象の地域を確認する。組入上位が海外企業中心であれば、外国での課税が発生している可能性があります。
  2. 支払通知書・年間取引報告書で外国所得税の記載を探す。分配時に調整済みの金額と、申告の対象として残る金額を分けて把握します。
  3. 自分の国外所得の割合を見積もる。控除限度額は所得総額に対する調整国外所得金額の割合で決まるため、そもそも枠がどれだけあるかを先に把握します。
  4. 必要な書類を揃える。外国税額控除では「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」のほか、外国所得税を課されたことを証する書類(納税証明書、賦課決定通知書、源泉徴収票など)や国外源泉所得の金額の計算に関する明細を記載した書類が求められます。

手間に見合うかどうかは金額によります。少額であれば申告の手間のほうが大きいという判断も成り立ちますし、繰越の余地を確保するために申告しておくという判断もあります。どちらが正しいと一律には言えませんが、「気づかないまま放置している」状態と、「計算したうえで見送っている」状態は別物です。ESGファンドの費用を目論見書で確かめるのと同じ姿勢で、税の側も一度だけ確認しておく価値があります。ファンドのコストそのものについてはESGファンドのコストは高い?信託報酬の目安と確認のしかたで整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q. NISA口座で買った海外ESGファンドでも外国税額控除は使えますか?
外国税額控除は、日本で課税される所得があり、その所得に外国所得税が課されている場合の制度です。日本で非課税とされている枠の中の所得については、差し引く相手の所得税額がそもそも生じません。ご自身の口座区分と商品での取り扱いは、証券会社の交付書類と所轄税務署でご確認ください。
Q. 分配時調整外国税相当額控除と外国税額控除は何が違いますか?
働く場所が違います。前者は集団投資信託の収益の分配等の支払を受ける場面で、その分配に係る所得税の額から控除された外国所得税の額のうち、受け取る分配に対応する部分を控除する制度です。後者は、外国で生じた所得に課された外国所得税を、自分の確定申告で所得税額から控除する制度です。どちらも確定申告書に一定の書類の添付が必要です。
Q. 外国で引かれた税は全額戻りますか?
全額とは限りません。所得税の控除限度額は「その年分の所得税額×(調整国外所得金額÷所得総額)」で計算され、この枠が上限になります。超える部分は復興特別所得税の控除限度額を限度に差し引けるほか、前年以前3年内の繰越の仕組みがあります。
Q. 控除しきれなかった分はどうなりますか?
その年に納付する外国所得税額が控除限度額を超え、前年以前3年内の各年に繰越控除限度額があるときは、その範囲で控除します。逆に外国所得税額が控除限度額に満たない年は、前年以前3年内の繰越外国所得税額を、限度額の残りの範囲で控除します。いずれも各年について明細書を添付した申告書を提出していることが前提です。
参考にした一次情報・公的資料
ESGファンドラボ リサーチ担当

サステナブル投資のリサーチを担当。ESG・環境・社会課題と投資の関わりを、中立的な視点でわかりやすくお届けします。数値は執筆時点の公式情報に基づき、投資判断は自己責任でお願いします。

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